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SHORT STORIES #005
山の家
薔薇は、咲く前も、咲いた後も、意味深げ。
ROSES, Inspirations
指切って薔薇の棘研ぐ木下闇
薔薇のなみだ
目の帳が下りないのでございます。
閉じても、閉じても、睫毛が目を開くように、自らがゼンマイのように瞼を引っ張り返すのです。
そこで残された目はただただ、お天道様を目にするうち、泪さえ渇れてしまうのでした。
地下鉄にて
午後十時二十二分、帰りの電車で、お題目を唱えながら、歩いてくる男あり。
ーー 電車の中で、化粧はやめなはれ
ーー 電車のなかで、けしょうはやめはれ
東京もまだまだ捨てたものではない。
薔薇を剪り刺をののしる誕生日 西東三鬼
ーー いっときの命を限りに咲き、朽ちていく花を、今年は、目をそらさずに見られるようになったように思う。
赤薔薇や天使図脇に泥踏みぬ
夏風や幾多の香りに地が動き
ーー 五月二十三日、コペルニクス、地動説唱える
一日の終わりに
やっとこさ、会社から帰ってきたのである。電車の灯りは電球のように黄色く見えてきたと思ったら、西瓜の匂いがするのである。
そんな香水があるのかと、ばかなことを考える。
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