Life, Trips, Mountains & Discovery

青光する猫は、扉の蔭で、極冠のノイズに耳をすます。

黒いスーツとコートに身を包んだ青年は、大小の黒いショルダーバッグをまとめて左肩からかけていた。 それだけなら目にはとまらなかっただろう。 眉毛が１ミリの細さなのだ。逆八の字の眉毛 ーー 漢数字の八の力強い運筆のはらいを逆さにしたような ーー に、必殺仕掛人を思わせるような細い目。真白なマスクで鼻さえ見えない。 バッグには、お茶のペットボトルが二本、白いビニール袋の中に入ったまま、無造作につっこまれている。 どのような顔して剃るのか、折り悪く、この細眉毛に断裂が走った場合、何日くらいで修復するのかなどと考えているうち、乗換え駅で降りることとなった。 はたして、その青年の１ミリの眉毛で階段をのぼってゆくのであった。

黒いスーツとコートに身を包んだ青年は、大小の黒いショルダーバッグをまとめて左肩からかけていた。 それだけなら目にはとまらなかっただろう。 眉毛が１ミリの細さなのだ。逆八の字の眉毛 ーー 漢数字の八の力強い運筆のはらいを逆さにしたような ーー に、必殺仕掛人を思わせるような細い目。真白なマスクで鼻さえ見えない。 バッグには、お茶のペットボトルが二本、白いビニール袋の中に入ったまま、無造作につっこまれている。 どのような顔して剃るのか、折り悪く、この細眉毛に断裂が走った場合、何日くらいで修復するのかなどと考えているうち、乗換え駅で降りることとなった。 はたして、その青年の１ミリの眉毛を本人はどう思っているのだろうと考えながら、階段を上るのであった。

見る者の時をつむぎ出すもみぢ